本や論文は人脈の代わりにはならない
そうじゃないでしょ、と思うので書く。
「企業が求めているのは問題を解決できる人間。問題が解決できることが重要であって、どうやるのかはその次の問題。だから、自分の能力・知識だけで解決できようが、自分の知り合いに解決してもらえようがどちらでも良い。」というような主旨の話。
あなたに求められているのは問題解決可能性 - 発声練習
これはその通り。企業の方が仰った、との事なので、あたり前ではあるけれど。
相談の深刻さについていろいろなレベルがあると思うけれども、求められているのは「問題が自分の手に負えないときにどのくらい質問/相談できる相手がいるか?」という点にあると思う。この「質問/相談できる」程度の間柄ならば、それほど親しくなくても大丈夫のような気がする。会えば挨拶し場合によっては社交的な雑談(5分程度)できる間柄ならば、礼儀正しく質問/相談すればある程度の情報はもらえるだろう。
あなたに求められているのは問題解決可能性 - 発声練習
この理解は一見間違っていないように見える。でも、ここで少し、ズレが生じている。そのズレは次の文章でハッキリする。
また、「人脈の必要性=問題解決の可能性がアップする」が正しいのであれば、重要なのは問題解決であって、人の多さではない。なので、人の代わりに本や論文であっても別にかまわないはず。図書館の司書さんやいろいろな文書館の司書さんと知り合いならば、ここをハブとして、人脈代わりに本を利用できる。
あなたに求められているのは問題解決可能性 - 発声練習
民間企業にある程度長く勤め、それなりのポストにいる人であれば、上記言説に違和感を覚えると思う。
「本や論文は人脈の代わりにはならない」のだから。
何故そんな事が言えるのか。理由は簡単。
世の中には、正解の無い問題の方が多いからだ。
学問の世界であれば、違うだろう。
正解のあるものは調べれば良いし、無いものは「今は無い」のであって、「今あるもの」を頼って正解に近付くこともできる。
それなら、「人の代わりに本や論文であっても別にかまわない」だろう。
でも、「本に載ってない」ことはどうするのか?
リアルタイムで刻々と変化するような情報はどこから集めるのか?*1
結局、頼りになるのは「人」なのだ。
もっと言えば、世の中には「自分ではどうにもならない事」も存在する。
自分の知識では駄目、自分の能力では駄目、自分のポスト・職域・権限では駄目…等々。
そういう時に、如何に目標に到達できるか。
知識を持つ人、能力を持つ人、ポスト・職域・権限を持つ人(例えば上司)を使う事も必要。
極端に言えば、自分の業務目標を達成するのに必要なら社長も動かさなければならない。
難しくは無い。稟議なんて正にそのためのものだ。
ひとりの能力には限りがある。
マネジメントできる人間がいれば、効率は何倍にも上がる。
できないこともできるようになる。
そのために必要なのは本や論文じゃない。
仕事は、人と人がやるものなのだから。
*1:ネットは意外と役に立たない。真贋の見極めが難しいし、本当に必要な部分は落ちていない。